第8回日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会年次学術集会(The 8th Annual Meeting of the Japan Human data Society of Diabetes and related diseases)

会長挨拶

テーマ:「多様なヒューマンデータの融合がもたらす医療の未来」

会長

第8回日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会年次学術集会
会長 中條 大輔
富山大学学術研究部医学系 臨床研究管理センター 教授

この度、第8回日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会年次学術集会を富山で開催する機会を賜り、ご関係の先生方には深く感謝申し上げます。

医療における「ヒューマンデータ」を紐解いてみますと、ナショナルデータベース(NDB)やカルテ情報等から抽出されるリアルワールドデータ、ゲノム解析データ、ヒト検体を用いて得られる研究データなど多様なデータが存在します。近年では、リアルワールドビッグデータを用いてRCTに準ずるエビデンスを創出する試みもなされています。

研究をデータの規模といった観点から見ても、NDBを用いたビッグデータ研究、能動的に必要なデータを収集・解析するレジストリ研究など大小様々であり、それぞれに長所・短所を有しています。さらに、近年では、糖尿病管理デバイスの進化が著しいことに加え、我が国でも診療支援を目的としたIoT・PHRの研究開発も活性化しており、これらを通じて集積されるデータの利活用も課題となっています。

私自身、糖尿病領域では比較的希少な1型糖尿病の診療・研究に長らく携わっており、レジストリ研究等にも参画していますが、ビッグデータとスモールデータの融合こそが診療課題や社会的課題の解決に重要ではないかと強く感じている次第です。そこで、本大会のテーマを「多様なヒューマンデータの融合がもたらす医療の未来」とさせていただきました。

本大会では、2つの特別講演と2つのシンポジウムを企画いたしました。特別講演1では、富山大学 疫学・健康政策学講座の関根道和教授に、「地域産学官連携でとりくむ生活習慣病予防」と題して、自治体の医療政策に資する医療データ研究についてご講演いただきます。また、特別講演2では、産業界から日本メドトロニック社の吉岡俊明様、角山信史様のご両名にご登壇いただき、糖尿病領域におけるITの利活用や治療デバイスの進化についてご講演いただきます。

シンポジウム1では、「ヒューマンデータが照らす糖尿病・生活習慣病診療の未来」のテーマのもと、医療ビッグデータ研究や大規模コホート研究の最新情報、糖尿病予防のための臨床試験など、糖尿病・生活習慣病診療の未来を切り開くべく取り組みについて、エキスパートの先生方にご講演いただきます。また、シンポジウム2では、「デジタル技術を駆使した糖尿病・生活習慣病研究」のテーマのもと、医学界、工学界、産業界の先生方にご登壇いただきます。電子カルテ直結型データベース(J-DREAMS)の最新情報やPHRの研究開発、人工知能を活用した生活習慣病研究や近未来デバイスの開発など、新時代の診療を予感させる取り組みについてご講演いただきます。

また、例年好評を博しております公開講座(統計セミナー)を今年も開催させていただきます。今回も統計数理研究所の野間久史教授にご登壇いただき、「生存時間アウトカムに対する多変数臨床予測モデルの構築と評価」と題して、具体的事例等もお示しいただきながら講義をいただきます。本講座は学会参加の有無に関わらず、現地・オンラインの両方にて受講いただけますので、多くの皆様に受講いただければ幸いです。

加えて、本学会では初の試みとなる若手優秀演題賞を設けさせていただきました。今後この分野を背負って立つ先生方より、多くの興味深い研究成果をご発表いただけるものと確信しております。また、今回、多くの演題をご登録いただき、この場をお借りして深く御礼を申し上げます。

本大会は、現地開催を原則としつつも、オンライン参加も可能な形態で開催させていただきます。冬の富山は日本海の幸の盛りであり、天候に恵まれれば立山連峰の絶景も望めます。ぜひとも、ご参加の皆様と富山の地で熱く楽しい議論ができることを切に願っています。皆様のご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。

2023年10月吉日