ご挨拶

第35回日本口腔感染症学会学術大会
大会長 竹信 俊彦
大阪歯科大学歯学部 口腔外科学第二講座 主任教授

このたび、第35回日本口腔感染症学会総会・学術大会を、2026年10月3日(土)・4日(日)の2日間、大阪の地で開催させていただくこととなりました。歴史ある本学会の学術大会を主催できますことを大変光栄に存じますとともに、開催にあたり多大なるご支援、ご協力を賜りました関係各位に心より御礼申し上げます。

本大会では「Oral Infections in the Era of Global Health Challenges」をテーマに掲げました。COVID-19の世界的流行を経験し、人や物が国境を越えて活発に往来する現代社会において、感染症は一地域、一診療科のみで完結する問題ではありません。また、抗菌薬耐性(AMR)の拡大は世界的な公衆衛生上の重要課題であり、歯科医療においても感染症の適切な診断・治療と抗菌薬適正使用がこれまで以上に求められています。口腔感染症を口腔という局所だけでなく、全身、社会、そしてグローバルヘルスの視点から捉え直す機会にしたいとの思いから、本テーマを選定いたしました。

本大会では、口腔感染症学の現在と今後を多角的に考えていただけるよう、さまざまな企画を準備しております。

まず、岸本裕充理事長には「口腔の感染制御を健康に活かす」と題して理事長講演をお願いしております。続く教育講演では、大阪歯科大学歯学部微生物学講座の沖永敏則先生に「病原菌を敵としない視点:口腔細菌叢のバランスと全身疾患のクロストーク」と題して、口腔細菌叢と宿主との相互作用、さらに全身疾患との関連について最新の知見をご講演いただきます。

シンポジウムでは、「AMR時代の歯科抗菌薬戦略:ガイドラインに基づく予防投与と処方の適正化」をテーマに、松野智宣先生に「感染性心内膜炎の概論と歯科処置における予防的抗菌薬」、岸本裕充先生に「抜歯・インプラント手術時の予防抗菌薬の適正使用」、太田耕司先生に「歯科における抗菌薬の治療的投与-開業歯科医師での使用状況を踏まえて-」、加島佳奈先生に「兵庫県における歯科領域での抗菌薬使用状況」についてご講演いただきます。予防投与から治療的投与、実際の処方動向までを俯瞰し、歯科医療における抗菌薬適正使用について議論を深めたいと考えております。

ランチョンセミナーでは、兵庫医科大学歯科口腔外科学講座の野口一馬先生に「吸収性プレート感染の真実-選択バイアスになっていませんか?-」と題してご講演いただきます。吸収性プレートと術後感染との関係を、臨床データの解釈という視点から考える興味深い内容です。

特別講演には、神戸市立医療センター中央市民病院総合内科の西岡弘晶先生をお招きし、「口腔から全身を診る感染症診療 ― 総合内科医・感染症医の視点―」と題してご講演いただきます。口腔感染症を全身状態や基礎疾患、感染症診療全体の中でどのように捉えるべきか、総合内科医・感染症医の立場からご解説いただきます。

さらにICD講習会では、「感染リスク回避術:炎症・感染・薬剤のトリプルマネージメント」をテーマとして、髙岡一樹先生に「歯性病巣感染と掌蹠膿疱症の関連性」、岩渕博史先生に「口腔カンジダ症発症予防における口腔健康管理の重要性」、岸本裕充先生に「薬剤関連顎骨骨髄炎の予防・治療における抗菌薬の適正使用」についてご講演いただきます。炎症、感染、薬剤という三つの視点から、日常診療における感染リスクの評価と対応を学ぶ実践的な講習会です。

感染症診療を取り巻く環境は大きく変化していますが、患者さんを丁寧に診察し、病態を正確に把握し、その患者にとって最も適切な治療を選択するという臨床の原点は変わりません。本大会が、口腔感染症に携わる多くの医療関係者が専門領域を越えて知識と経験を共有し、明日からの診療につながる新たな視点を得る場となれば幸いです。

大阪の地で皆様をお迎えできますことを、教室員ならびに準備委員一同、心より楽しみにしております。本大会が日本口腔感染症学会のさらなる発展と、わが国の口腔感染症診療の向上に寄与することを願い、開催のご挨拶といたします。