理事長あいさつ

日本脳血管・認知症学会理事長 池田佳生

日本脳血管・認知症学会
理事長 池田 佳生

この度、森下竜一先生から引き継ぎ、日本脳血管・認知症学会の4代目理事長に就任しました池田佳生と申します。これまで歴代の理事長の先生方、各委員会の委員長の先生方、学会員の皆様、事務局の皆様など多くの方々に支えられて発展してきた本学会を、さらに多くの学会員を増やして活性化し、一般の方々にも広く認知されるような学会へ成長できるよう努力をいたす所存です。皆様におかれましては、今後とも暖かいご支援をいただくことができましたら幸いです。

本学会は2010年4月に日本Vas-Cog研究会として発足後、2014年10月に発展的に日本脳血管・認知症学会(Vas-Cog Japan)と学会名を変更し現在に至っています。本学会の構成に関して、2021年12月時点の学会員数は200名であり、65名の評議員、26名の理事、2名の顧問と2名の監事からなる役員により構成されています。これまで計11回の総会を開催してきており、2015年9月にはVas-Cog World(第7回国際会議)を本学会総会と合同で開催致しました。

わが国は世界でも類を見ない高いレベルの超高齢社会を迎えており、これに伴って認知症の患者数も急増しています。2012年の推計値で全国の462万人(65歳以上の高齢者の15%)が認知症と考えられており(厚生労働省研究班報告)、団塊の世代が後期高齢者となる2025年には認知症患者数は約700万人に達すると推定されています。このため、認知症患者さんと家族の方を取り巻く社会整備や、認知症に対する早期診断法や有効な治療法の開発研究の発展が強く望まれています。

本学会の活動趣旨には各種の認知症の発症と進展における血管性因子の関与を研究することに主眼が置かれている点、基礎分野と臨床分野の研究者が融合的に研究活動を推進している点、脳神経内科・循環器内科・老年病科・精神科・脳神経外科等、認知症の臨床に関わる多くの診療科の医師・研究者が垣根を越えて幅広い視点から活動を行う点が挙げられ、他の学会には認められないユニークな学会活動を展開しています。

学会誌であるVas-Cog Journalは、2019年発効の第5号より完全英文化され、査読付きレビュー論文や症例報告、学会活動報告など内容も大幅に充実しています。今後はPubMed Central (PMC)へ論文が掲載されるような学会誌とするため、更なる検討が学会誌編集員会を中心として推進されています。また、毎年夏期に開催される総会においては、異なる専門領域の研究者・医師・医療スタッフが一堂に会して成果発表と活発な議論が行われています。

認知症をめぐる政府の取り組みとして、2019年6月には「認知症施策推進大綱」が策定され、認知症になっても尊厳と希望を持ち、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる「共生」を目指し、認知症の発症や進行を遅らせるといった「予防」の2つをキーワードとして推進していく政府の方針が示されました。この施策の実現に向けて本学会の活動は大きく寄与することになると思います。

従来、生活習慣病を始めとした血管障害をもたらす因子は血管性認知症における病態において深く論じられてきましたが、神経変性疾患に分類されるアルツハイマー病においても多くの血管性因子が神経変性のメカニズムに深く関与することが明らかになっています。本学会における学術活動はアルツハイマー病を始めとする認知症の病態解明や、有効な予防法や治療法の確立をもたらすことになり、ひいては大きな社会貢献にも繋がると信じています。本学会の活動理念は多くの分野の専門家、さまざまな医療職の方々の学術的ニーズにも良く適合すると思います。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。

2022年4月1日